根腐疫病の発生原因と今後のトマト栽培に向けての対策
- 2019/11/21
- 21:20
こんにちは、温室トマト管理人です。今回は温室トマトで9月下旬ごろから発病を確認し大規模に被害が発生している根腐疫病についての記事になります。根腐疫病が発生した原因と今後のトマト栽培に向けての対策について考察します。
根腐疫病の発生原因
根腐疫病の発生原因は糸状菌(カビ)フィトフトラ・クリプトジアに感染する事で発生します。根から感染するのが特徴で、根の生育環境が糸状菌に感染しやすい環境が整っている場合に発生します。この糸状菌に感染しやすい環境を作らない事が病気の発生を防ぐために非常に重要になります。今回、根腐疫病の原因となった糸状菌の特定には病害虫防除所で検査をして頂きました。
今シーズン、根腐疫病が大規模に発生してしまった事について糸状菌に感染してしまう環境を作ってしまったその原因を根の生育環境から考察してみます。
トマト栽培培地について問題はなかった?
トマトの根が生育する栽培培地は根腐疫病が発生する環境としては最適ではあります。固形培地の種類による病気の発生には経験上ほとんど差はありません、温室トマトではロックウール培地・ヤシ殻培地を使用していますが病気は発生しています。しかし更新した新しい栽培培地そのものに病気の原因となる糸状菌が潜んでいる事はほぼ無いため(栽培培地の再利用を除く)外部からの侵入が考えられます。
また培地内の病原菌対策をしていない栽培培地の再利用は病気の発生リスクが非常に高く過去に今シーズンと同じように大規模に根腐疫病が発生した事があり、その経験から毎シーズン栽培培地を新しいものに更新をしてきました。
今シーズンも例年通りトマト栽培に使用した栽培培地はすべて入れ替え新しい栽培培地に更新したのですが、それにもかかわらず根腐疫病が大規模に発生しました。このことから栽培培地に問題があるのではなく、それ以外に原因があると考えられます。
栽培設備からの病原菌侵入は?
根腐疫病が侵入した経路として栽培設備も原因として考えられます。栽培培地に直接触れるものとしてかん水ドリッパー、栽培培地を設置する台座、台座に敷くマルチシートが挙げられます。
かん水ドリッパー
かん水をする際に使用しているドリッパーは直接栽培培地に差し込んで使用するため、病原菌が付着している場合には病原菌の感染経路になる恐れが高いです。根の残渣、栽培培地の破片などに病原菌が残っている可能性があるため栽培を開始する前には農業資材用消毒液で殺菌をして念のため栽培培地にセットする際にも消毒液につけてから差し込みます。消毒液を使用する事で完全に病原菌を殺菌する事は難しいですがかん水ドリッパーからの感染リスクはかなり低かったと考えられます。
栽培培地設置用台座
栽培培地は直接地面に置くのではなく地面より少し高く設置してある台座に置いておきます。この台座には排水用の水路があり培地にかん水をした際に余った排液を流すための役割があります。水路にも病原菌が残っている事がある為、栽培開始前の準備の際には消毒液を使用して殺菌を行っています。殺菌後にはマルチシートを張りその上に栽培培地を設置するため台座に直接触れる事はありません。
温室トマトでの栽培培地設置用台座は排水用水路の傾きがズレてしまっているため排液がうまく流れなくなっている箇所が複数あります。排水の流れが悪いため水が滞留している場所には病原菌も集まっているかも知れません。
かん水設備
病原菌の侵入経路としてかん水設備も考えられます。まず水を溜めておくための原水タンク、トマト栽培に使用している水には水道水・雨水または地下水など種類があります。雨水などは取水している場所が用水路などの場合、排水された水などが入り込む事があるため注意しないといけない場合があります。原水タンクの設置されている場所が地下の場合には雨水や排水などが入り込まないようにしておく事が大事です。また原水タンク内も汚れが溜まっているようであれば掃除などを行いクリーンな状態にしておきたいところです。
かん水配管の水漏れ箇所などが病原菌の侵入経路になる場合があります、地下部の水漏れ箇所から病原菌が侵入してかん水の際に栽培培地内に入り感染します。
とくに埋設しているかん水配管は水漏れを起こしている場所が分かり辛く、地上部まで水が噴き出して初めて水漏れが分かる場合が多いです、少しの水漏れ箇所は発見するのが困難となり慢性的に病原菌の侵入経路になる場合があります。
栽培管理時の病気感染
管理作業用器具からの侵入
栽培管理時の病気感染についていくつか考察してみます、まずトマトの管理作業に使用する収穫ハサミ・芽切ハサミからの病原菌の侵入について。根腐疫病を発症させる糸状菌(カビ)フィトフトラ・クリプトジアは根からの感染が一番の原因となります、そのため管理作業に使用するハサミからの樹液感染は直接根の部分に振れない限りは感染する事は少ないと考えられます。ただし感染しないとも限らないためその他の病気の感染予防と合わせて管理作業時に作業ハサミの消毒を行うことが大事となります。
外からの持ち込み(作業靴・手袋・作業ハサミなど)
トマトの管理作業時に温室に入る際には作業靴など靴底の消毒・土などの汚れを落として入るようにし、出来れば温室内で使用する作業靴は別に用意しておくと良いです。外からの病原菌の持ち込みを少しでも軽減できると考えられます。
また、他の場所で使用していた作業ハサミ・手袋などを持ち込んで管理作業に使用していると病原菌の侵入の可能性があるため温室内で使用するものとは別にしておいた方が良いです。
根腐疫病発生原因・まとめ
根腐疫病の発生原因をまとめると、
病原菌(カビ 糸状菌)が感染する根域の栽培培地の環境
トマトを栽培する栽培設備の状態
栽培管理時の病原菌感染リスク
以上の要因がそれぞれ組み合わさる事で病気の発生しやすい栽培環境となります。またこれらの要因に加え温室内の気温・湿度・日射量などの気象環境、かん水による根域の水分状態も病気の発生に影響を与えます。どれか一つだけで対策をするのでは防ぐことが非常に難しく総合的に病原菌を侵入させないように対策をする必要があります。
今後も根腐疫病に関しては考察を続けて行きます。
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